- 債務整理
Q.自宅がある場合の自己破産
「自己破産した場合、自宅はどうなりますか?」、「自己破産した場合、自宅にはいつまで住めますか?」等のご質問を法律相談で受けることがあります。そこで、自宅がある場合の自己破産について、よくあるご質問を以下にまとめました。
1 自宅がどうなるか?
自己破産とは債権者を全て平等に扱う手続きですので,住宅ローンの支払も止める必要があります。
そうすると、住宅ローンが残っている自宅は、破産管財人が選ばれない事件(同時廃止事件)の場合には、競売で処分されることになります。破産管財人が選任された場合には、破産管財人による売却又は競売で自宅が処分されることになります。そして、住宅ローンが残っていない自宅は、破産管財人が処分することになります。
このように、自己破産の場合、自宅を失うことになります。自宅を残して借金の整理をしたいと考えられている場合には、自己破産ではなく個人再生を選択する必要があります。
2 自宅には、いつまで住めるか?
・自己破産申立前に自宅を任意売却する場合、破産管財人が不動産を売却する場合
売買終了まで自宅に住めます。
・競売で自宅が売却される場合
競売の買受人から退去を求められるまで自宅に住むことができます。債権者がいつ競売を申立てるかは、事案によって異なりますが、支払いを停止して半年位で申立てがあることが多いです。競売で買受人が決まるには、半年位かかりますので、支払いを停止してから約1年は自宅に住むことができます。
3 破産管財人が選ばれる基準
破産管財人が選ばれると、裁判所に最低でも予納金約20万円を納付する必要があります。同時廃止になるか管財事件になるかは、依頼者にとって大きな問題です。
その基準は自宅不動産については、概ね以下のとおりです。なお、裁判所によって運用が異なります。
①住宅ローンの残債務が、抵当権がある自宅不動産の固定資産評価額の2倍を超える場合
自宅不動産に価値がないと判断されるので、同時廃止
②住宅ローンの残債務がが抵当権がある自宅不動産の固定資産評価額の1.5倍~2倍の場合
住宅ローンので残債務が査定書の評価額の1.5倍を超えるときは、同時廃止
4 自己破産申立前の任意売却
任意売却とは、抵当権者の同意を得て不動産を売却することです。任意売却をすると自宅の立ち退きは競売より早くなりますが、情報が公開される競売と違い、無関係の人に売却の情報を知られずに売却を行える点で、住宅ローンの債務者にメリットがあります。そして、抵当権者にとっても、任意売却は、競売よりも不動産が高く売れる可能性が高く、競売申立の費用を節約できるので、メリットがあります。
自己破産申立前の任意売却は、もちろん適正価格で行う必要があります。不当に安く売買した場合には、破産管財人にその売買を否認されるリスクがあります。しかし、そもそも不当に安ければ抵当権者の同意が得られないので、通常、否認されるリスクは大きくありません。