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Q.消滅時効改正の離婚事件への影響

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 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、従来、「被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。」とされていました。これに加えて、2020年4月の民法改正により、「人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、被害者又はその法定代理人が加害者を知った時から5年間行使しないときは、時効によって消滅する。」との規定が追加されました。
 この改正は離婚事件にどのように影響するでしょうか?

 離婚事件で慰謝料を請求する場合には、①離婚の原因となる暴力等についての慰謝料請求と②離婚自体による慰謝料請求の2つがあります。その違いは、遅延損害金の起算点が①は不法行為時であり、②は判決確定時となることです。このように、民法改正前は、どちらを請求しても大きな違いはありませんでした。

 しかし、民法改正により、人の生命又は身体を害する不法行為の消滅時効は5年間で、単なる不法行為の消滅時効の3年より長くなりました。そのため、離婚後長期間経過してから、慰謝料請求をする場合に、①の方は請求できるが、②の方が消滅時効で請求できないことが起こりえます。婚姻中の暴力で大きな怪我をしたが、離婚直後は怖くて請求できなかった等のケースについての損害賠償請求が今後増加すると予想されます。

 なお、夫婦間の権利についての時効は、離婚の時から6か月を経過するまで完成しないとの民法159条は、民法改正でも残されています。