• 交通事故

Q.判例タイムズの過失割合とは?

  • 裁判

交通事故の法律相談で相談者の方から、「相手の保険会社から、『判例タイムズで過失割合が決まっているので、4割6割で示談しませんか。』と言われました。判例タイムズとは何でしょうか?過失割合は争えないのでしょうか?」との質問を受けることがあります。

①判例タイムズとは
 交通事故の示談交渉で登場する「判例タイムズ」とは、(株)判例タイムズ社が発行している「別冊判例タイムズ38号 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(以下「別冊判例タイムズ38号」といいます。)という書籍のことです。
 別冊判例タイムズ38号は、東京地方裁判所の交通専門部である民事第27部の裁判官が作成したものであるので、交通事故の賠償実務上、過失割合の認定において非常に重視されています。 

「別冊判例タイムズ38号」の表紙

 別冊判例タイムズ38号では、事故が車対車か、車対人か、道路状況、位置関係等により、基準となる過失割合を整理し、その修正要素が記載されています。
 例えば、別冊判例タイムズ38号215頁の101図では、交差点での車対車の過失割合を、同程度の速度の場合、左方車40%、右方車60%としています。そこで、保険の担当者は、よく「判例タイムズ101図で40%60%なので、それで示談しませんか。」との言い方で示談を持ちかけてきます。

「別冊判例タイムズ38号」 215頁

②別冊判例タイムズ38号の過失割合は争えないか
 交渉段階では、別冊判例タイムズ38号の修正要素があるので、過失割合の修正を求めるという形で過失割合を争います。修正要素とは、例えば、「著しい過失があった」、「重過失があった」、「一時停止がなかった」等です。もっとも、修正要素があることの証明(ドライブレコーダーの画像、実況見分調書等)がないと、相手保険は修正に応じません。

 訴訟段階でも、別冊判例タイムズ38号の修正要素の有無を巡って主張立証がされることが多くあります。判決では、裁判官は別冊判例タイムズ38号との比較ではなく、事故状況等から改めて過失割合を認定します。しかし、別冊判例タイムズ38号と異なる結論を取ることが妥当と裁判官に判断してもらえるだけの証拠がない場合には、判決内容は、ほぼ別冊判例タイムズ38号どおりとなります。なぜなら、裁判官は、損害の公平な分担との観点から、他の事件との均衡も考慮しているからです。

 このように、別冊判例タイムズ38号の修正を求めたり、別冊判例タイムズ38号と異なる過失割合を求めるには、客観的な証拠が不可欠です。やはり利用される車には、ドライブレコーダーを設置しておくことが非常に大切です。