- 離婚
Q.財産分与として退職金をもらえるか?
離婚の法律相談では、「離婚したら、退職金をもらえますか?」、「離婚したら、退職金を渡さないといけないですか?」等の退職金と財産分与の関係についての質問をよく受けます。そこで、退職金と財産分与の関係をまとめました。
1 将来もらう退職金が財産分与の対象か否か
財産分与の対象は、原則として、別居時点の共有財産です。なぜなら、財産分与は夫婦が協力して取得した財産をわける制度であるところ、夫婦の協力関係は別居時に終了するからです。
そうすると、別居時点では、退職金をもらっていない以上、退職金は財産分与の対象ではないとも思えます。しかし、東京地方裁判所平成11年9月3日判決は、「退職金には賃金の後払いとしての性格があることは否定できず、夫が取得する退職金には妻が夫婦としての共同生活を営んでいた際の貢献が反映されているとみるべきであって、退職金自体が清算的財産分与の対象となることは明らかというべきである。」と判断しました。
このように、退職金の賃金後払いとしての性格を重視して、将来の支給の可能性が高い場合には、財産分与の対象となると考えるのが一般的です。
2 何年位先の退職金が対象か
どのような場合が、「将来の支給の可能性が高い」に該当するかは、難しい問題です。民間企業か公務員か、退職金規程の有無等によって異なります。
この点、書籍「離婚に伴う財産分与ー裁判官の視点にみる分与の実務」(松本哲弘著、p109)では、「最近の実務は、支給が相当先であっても、退職金が賃金の後払い的性質を有するものとすれば、勤務期間に応じてその額が累積していると考え対象財産とする。」とされています。
3 退職金の算定方法
退職金が財産分与の対象となる場合の計算方法には、以下の3つの考え方があります。
①別居時に自己都合退職した場合の退職金相当額から婚姻前の労働分を控除する。
②定年退職時の退職金から別居後労働分を引いて、さらに中間利息を控除して、離婚時に支払う。
③定年退職時の退職金から別居後労働分を引いて、支払時期を退職時として中間利息を控除しない。
これらのうち、①が一般的な計算方法です。
②とすると、勤続期間が長い方が支給率が上がるので、もらえる金額が増えます。しかし、財産分与は原則別居時における清算であるので、②の計算方法をするのは、支給まで約5年以内のケースです。
③は、将来の支払いをどのように確保するかという別の問題があるので、あまり用いられません。