- 遺言相続
Q.遺産の調査方法
遺産分割の相談に来られた方から、「父が亡くなってから兄が遺産を管理し、次に母が亡くなったので、遺産の状況が全くわかりません。どうすればいいでしょうか?」との質問を受けることがあります。
遺産分割協議、遺産分割調停申立てを行うには、正確な遺産目録を作成することが必要です。そこで、遺産分割を受任した場合には、弁護士が以下のような調査を行って、遺産を調査します。なお、調査費用は、着手金に含まれていますので、調査に要する実費以外の費用は頂いておりません。
1 金融機関への照会
戸籍等必要な書類を収集し、金融機関へ口座の有無、過去5年位の取引履歴の開示を求めます。過去5年位を取得するのは、取引履歴から別の口座や保険が判明することがあるからです。
もう少し遡りたいところですが、多くの金融機関が5年までしか開示を行っていません(暦年贈与の持ち戻しが7年に変更されたので、今後は運用が変わると思われます。)。
2 保険の調査
被相続人の契約していた保険会社がわからない場合には、一般社団法人生命保険協会の生命保険契約照会制度で生命保険契約の有無を調査します。
保険会社が判明すれば、保険会社に対し、弁護士会照会(弁護士法23条の2)等により照会を行って、保険内容を調査します。
3 不動産の調査
まず、被相続人が住んでいた市区町村役場の資産税課で名寄せ帳を取得して、不動産の調査を行います。名寄せ帳とは、課税対象となっている不動産を所有者ごとに一覧表にしたものです。未登記物件であっても課税対象であれば、名寄せ帳に記載されています。また、被相続人が被相続人の親等が所有する物件の納税管理者になっていれば、その名寄せ帳も取得できますので、遺産分割未了の財産が発見できることもあります。
もっとも、名寄せ帳は、市区町村単位であるので、居住地以外の市区町村に不動産を持っている場合には、その市区町村を特定する必要があります。
その時に、利用できるのが、登記情報の名寄せサービスです。登記簿に記載された情報をインターネットで取得するサービスを提供している団体には、一般財団法人民事法務協会、登記簿図書館等があります。そのうち、登記簿図書館では、不動産登記情報の名寄せができますので、所有者名を入力して、その人が所有している不動産を検索することができます。ただし、全ての登記情報ではなく、登記簿図書館のデータベース内の情報に限られます。
4 債務の調査
被相続人の信用情報を取得して、債務の調査を行います。信用情報登録期間は、全国銀行個人情報センター(銀行関係)、CIC(クレジット会社関係)、JICC (消費者金融、銀行関係)の3つです。内容は重複することもありますが、念のため3つとも取得しています。
5 相手への照会
ある程度資料が集まったら、相手にも遺産の開示を求めます。正確な遺産目録を作成することが話合いの前提であることを説得して開示を求めていきます。